羽海野チカの新作『3月のライオン』を読む。

3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)

 読んでいると同じ設定の将棋マンガ『しおんの王』とどうしても比べてしまう。ただこの2つのマンガは主人公の性別が少年と少女で違うことよりも、「しおんの王」が誰が両親を殺したのかという謎から、犯人らしい人物がしおんに接近してくるというスリラーになって読んでいて怖いくらいの展開なのに対して、『3月のライオン』は家族を失った零の心がいやされていくという物語で、似ているのは成田美奈子のマンガ『CIPHER』の後半部分だ。『CIPHER』のほうはある事件がきっかけで心が傷ついたサイファがL.A.にいって新しい人間関係の中で立ち直っていくという話で『3月のライオン』と同じテーマを描いている。
 この00年代になって『3月のライオン』の零は何に傷ついているのかということがわからない。そこが以前といまの違いだ。そしてじょじょに零は新しい生活を獲得していく。
 と考えていたが付録のクリアファイルが欲しくて買った「ヤングアニマル」最新号の連載分を読んだら零はまた新しく傷ついて苦しんでいる。1歩進んでまた2歩下がるだ。
 これは一筋縄ではいかない。